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既往症としてヘルニアがある場合、補償はどう考えればよいか


「既往症がある=補償されない」ではありません


もともとヘルニアの診断を受けていた方が交通事故に遭うと、「持病があるから、慰謝料は受け取れないのでは」と考えてしまうことがあります。ですが、既往症があること自体は、補償を受けられない理由にはなりません。


保険会社との交渉では、既往症の存在が話題になることが多いのは事実です。ただし、それは「補償がゼロになる」という意味ではなく、「事故による悪化分をどう評価するか」という話であることがほとんどです。


事故の前後で何が変わったのか?を明確にすることが重要


補償を考えるうえで大切なのは、事故の前にどのような状態だったか、そして事故のあとにどう変わったかを、できるだけはっきりさせることです。


たとえば、「事故前はなんの症状もなかったが事故後痛みや痺れが出てきた」あるいは「事故前は軽い違和感程度だったのに、事故後に強い痛みや痺れへと悪化した」という場合には、その変化の部分が補償の対象として検討されやすくなります。


逆に、事故前後で症状にほとんど変化がない場合は、事故との関係を説明しづらくなります。


なぜ既往症があると、因果関係を争われやすいのか


ヘルニアは加齢や体質でも起こり得るため


椎間板ヘルニアは、交通事故のような強い衝撃だけでなく、加齢や日常生活の負担によっても生じることがあるとされています。そのため、保険会社からは「事故が原因ではなく、もともと進行していたものではないか」と主張されることがあります。


こうした主張がされること自体は、めずらしいことではありません。大切なのは、その主張にどこまで根拠があるのかを、落ち着いて確認していく姿勢です。


「素因減額」という考え方との関係


既往症を理由に賠償額が調整される場合、「素因減額」という考え方が関係してくることがあります。これは、事故前からの持病や体質が、症状の悪化や治療の長期化に影響していると判断された場合に、その分を差し引くという考え方です。


素因減額の詳しい内容や対応の考え方については、別記事「交通事故の素因減額とは?過失相殺との違いと対応のポイント」でくわしく解説していますので、あわせてご覧ください。


事故によって症状が悪化したことを、どう伝えるか


事故前の状態と事故後の変化を整理しておく


既往症がある場合ほど、事故の前後で症状がどう変わったかを、自分の言葉で整理しておきましょう。


事故前は通院していなかったのに、事故後に通院が必要になった、あるいは事故前より痛みの範囲が広がった、といった変化は、悪化を示す手がかりになります。


普段の生活のなかで気づいた変化は、時間が経つと忘れてしまいやすいものです。気づいたタイミングで、簡単にでもメモを残しておくことをおすすめします。


医師に伝えるときに意識したいこと


通院の際は、事故前からあった症状と、事故後に新しく出てきた症状、あるいは強くなった症状を分けて医師に伝えることが大切です。「もともと軽い腰痛はあったが、事故後は座っているのもつらいほど痛みが強くなった」というように、変化の内容を具体的に伝えることで、診断書にも状況が反映されやすくなります。


自己判断で症状を軽く伝えてしまうと、あとから正確な状態を証明しづらくなることがあります。感じている症状は、遠慮せずに医師へ伝えてください。


医師への症状の伝え方にはポイントがあります。診察時には、以下の点を明確に分けて医師へ伝えてください。

事故前からあった状態

たまに腰にだるさがある程度で、通院はしていなかった

事故後に新しく現れた症状

事故の直後から、右太ももから足先にかけて鋭いしびれが走り、座り続けることができない


医師のカルテに「事故を契機として明らかな神経症状が出現した」という経過をはっきりと残してもらうことが、のちの示談交渉や後遺障害申請で重要になります。


通院・検査で気をつけておきたいこと


できるだけ早く受診すること


事故のあとに痛みやしびれを感じた場合は、できるだけ早めに整形外科を受診してください。受診が遅れると、症状と事故との関係を説明しづらくなることがあります。

事故直後は緊張から痛みを感じにくい場合もありますが、少しでも違和感があれば、早めに医師に相談してください。


できるだけ早くMRI検査を受ける


MRIなどの画像検査は、事故前後の状態を比較するうえでの重要な資料となります。既往症がある場合は特に、事故前後でどのような変化があったかを、画像でも確認できるようにしておくとよいでしょう。


レントゲン(単純X線)は骨の異常しか写らないため、椎間板や神経の圧迫状態を確認するにはMRI検査が必須です。


事故から受診・検査までの期間が空いてしまうと、「事故の衝撃で悪化したのか、事故後の日常生活で悪化したのか分からない」と因果関係を否定されるリスクが高まるため、早期に撮影することが重要です。


検査を実施するかどうか最終的には医師の判断によるところですが、遠慮せずに医師に相談しましょう。


神経学的検査を受けておく


ヘルニアが神経を圧迫していることを証明するために、整形外科で以下の神経学的検査を受け、結果をカルテや診断書に記録してもらうと良いでしょう。


  • 神経根誘発テスト

    • 首のヘルニア:スパーリングテスト、ジャクソンテスト

    • 腰のヘルニア:SLR(下肢伸展挙上)テスト、ラセーグテスト、FNSテスト

  • その他の検査

    • 深部腱反射(膝やアキレス腱の反射の低下・亢進)、知覚検査(触覚・痛覚の鈍麻)、筋力・筋萎縮検査


慰謝料や後遺障害の請求について


治療を続けても症状が残ってしまった場合には、後遺障害として等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料などを請求できる可能性があります。認定される等級は症状の内容によって異なり、たとえば神経症状が残る場合は、第12級や第14級に該当する場合があるとされています。


等級や金額の見通しについては、個別の状況によって大きく変わるため、この記事だけで判断せず、専門家に確認することをおすすめします。


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弁護士に相談するタイミング


既往症がある場合の交渉は、専門的な知識が必要になる場面が多く、ご自身だけで保険会社とやり取りを続けるのは負担が大きいものです。特に、次のような状況になったときは、早めに弁護士へ相談することを検討してみてください。


  • 保険会社から「既往症が原因」と言われ、対応に困っている場合

  • 症状が長引いており、今後の見通しが分からず不安な場合


弁護士に相談することで、事故前後の状況を整理し、悪化した部分についてどう主張していけるかを、一緒に考えてもらえる可能性があります。また、必要な資料の集め方や、医師とのやり取りの進め方についても、相談しながら進められる点は心強いポイントです。


まとめ|一人で判断せず、まずは相談を


既往症としてヘルニアがあることは、補償を受けられない理由にはなりません。事故の前後で症状がどう変わったかを整理し、医師に正確に伝えていくことが、対応の出発点になります。


保険会社から既往症を理由に主張をされると、これまでの自分の体調を否定されたような気持ちになることもあるかもしれません。ですが、悪化した部分については、補償を求められる可能性が残されています。


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